『ラスト・チャイルド』 少年がかっこよすぎ

 双子の妹が誘拐され、家族がぼろぼろになってしまった状況の中で意志の力で強く生きるこの少年の姿が、痛々しくも、かっこよすぎます。こんな少年が目の前に現れたら、もう、自分の存在が恥ずかしすぎて、穴があったら入りたくなることでしょう。

 背景の事件は、許しがたい卑劣なもので、現実にはあってほしくない、犠牲者がいてほしくないと思いながら読むことになって、苦しくなります。少年がそこまで強くならなければならないなんて、理不尽なことです。

 ストーリーは、少年、刑事、友達、それぞれの家族が中心となって進んでいきます。脇役で、ちょっと不思議な人物が出てきます。もしも、その人の起こす不思議な出来事を軸に物語が進んでしまったら、あまり好きになれない話だったかもしれません。その人の存在には重要な意味がありながら、現実ばなれの度合いが抑制されていて、違和感なく読めました。不思議な(変な)人なんだけれど、大切な何かを守っている人物として光っていました。