リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上・下) アンドリュー・ロス・ソーキン(著) 加賀山 卓朗(訳)

 実は、図書館への返却が迫っていたので、下巻は流し読みです。

 上巻は、ファニー・メイ、フレディマックが政府の管理下に入り、ベアーズの救済と続いて、雲行きがかなり怪しくなる頃から始まります。信用危機で大騒ぎになっていたリーマン・ブラザーズのCEOだったファルドの人物像が、生々しく描かれています。過去の栄光にしがみついているのか、プライドばかり高く、目の前の自社の危機を認めず、合理的な対処とはほど遠い言動……。ウォール街のCEOたる人物、一癖も二癖もあるのでしょうが、これでは、(社員が)かわいそうですが、つぶされてしまってしかたがないと思わせるような危機管理能力しかもっていないという感想を持ちました。みごとにぶざまな姿で描かれていました。

 下巻でも、切羽詰まった状態で、そうそうたるCEOたちが交渉、駆け引きをする姿が、リーマンの破綻、AIGの危機といった時期までずっと描かれます。ポールソン、ガイトナーバーナンキなど、政府関係者も出てきます。とくに、システミック・リスクを防ぎたいけれども、議会(国民)からの批判との板挟みになって、ぼろきれのようになっていたポールソンは、まあ、お疲れ様という印象です。

 全体として、舞台裏を描いたノンフィクションという本でした。CEOたちの責任とか、倫理問題とか、「Too Big to Fail」という歪んだ金融政策の問題の議論は直接的にはありません。でも、こういうのを読むと、どうしても気になりますよね。自由な資本主義社会なのだから、お金が欲しければ、ウォール街で勝負すればいいという理屈もあるでしょうが、それも程度の問題。自己資本比率などの規制や当局の監視とか、そういうことで、少しはまともになってくれればいいのですが。

リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(上) 追いつめられた金融エリートたち


リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人
リーマン・ショック・コンフィデンシャル(下) 倒れゆくウォール街の巨人